伸ばした生地を切って一気に鍋に投入して茹でる。茹で上がったうどんを打ち上げ冷水に投入して、表面のぬめりを洗い流す。小分けにした玉をざるを敷いたせいろに打ち上げて水気をきり客を待つ。客が注文すれば後は手ぶりに入れて、さばき加熱して出汁を掛け客に出す。

 なぜ茹で上がった麺を洗うのは 感覚的に理解できる。麺から出て来るデンプンと塩分を除くためである。うどんを良く食べる香川県民なら常識のようなものであるが・・・打ち上げたばかりのうどんに醤油をかけて食べる「醤油うどん」を食べるとよくわかる。

 醤油うどんは少しうどんに残ったぬめりを楽しむ食べ方である。従って洗い打ちあがったばかりの水が垂れる玉がないと食べられない。おじさんの子供の頃からの食べ方は 味の素をパッとかけて醤油をかけるものであったが・・今では だし醤油をかけている。これに温泉卵を加えると・・よだれが・・冷やしカマ玉ごとき見た目で 夏に良く合う。

 カマ玉と言う食べ方もあるが これは釜から取り出されるタイミングによって味のばらつきが大きく、またうどんの「こし」が楽しめないので おじさんはあまり食べない。

 以上は おじさんのうどん屋さんでの食べ方であるが、小学校高学年になり うどんを買ってこいと言われてうどん屋に行くと、ビニール袋に入れて持ち帰るようになった。ところがこれが新たな食べ方に繋がっていった。袋の中で麺がくっつきだすので さばくには水気が必要となる。お湯で再度温めて食べるなら問題はないが、そこまでは面倒となる。同時期に東マルの粉末うどんスープが登場していた。これを魔法瓶のポットのいささか冷めたお湯を注ぐと即席の出汁となる。これを絡まったうどんに少量かけてほぐし、醤油との合わせ技で食べる。少し麺から溶け出したデンプンが合わさって甘さが加わる。補足しておくと ネギは少し辛さなどが加わり、微妙なあじわいを殺すので醤油うどんの場合は控えた方が良い。また 醤油の掛け過ぎは うどんを味わう繊細さを打ち消してしまう。

うどん

 水洗いは ぬめり(小麦粉から溶け出したデンプン)をとるというほかに、浸透圧(水がうどんの中に入っていく)を緩和し、麺に残った塩分を落とすという目的がある。 しっかりした水洗いは麺を美味しく、美しくします。おじさんが 香川のベスト5の常連だった「彦江うどん店」のおばさんがリュウマチで曲がった指で、一心にうどんを冷水で洗っていたのを思い出す。おじさんは今も近所なので、親父さんとは散歩などで たまにすれ違う。おばさんは愛知県出身で おじさんが 名古屋でのサラリーマン時代に恋愛の末・・とは近所のおばさんからは聞かされている。彦江のおじさんに教えられるまま 忠実にやっておられたと想像している。

 セルフうどん屋さんなどで人気が出ると水にさらしたままの あまり洗わないうどんが出て来る。麺の舌触りなどに違和感を持たない人間が増えたと思っている。しかし おじさんは お店などで そういうことを言うタイプでもない。一生懸命作って貰ったものを頂く。それだけでありがたい。

たかがうどん されどうどんである

投稿者

おじさん

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