造船分野以外の方には話題にならないが、韓国造船業が「大コケ」しそうな話題がある。脱炭素化に伴う鋼材の価格上昇などマイナスの風が吹き荒れる中で、ロイターから「欧州連合の欧州委員会(EC)は現代重工業による大宇造船海洋の買収に対して企業結合禁止命令を下す見込み」という情報が出てきた。
欧州の独占禁止当局が、現代重工業による大宇造船海洋の買収を許可しないことが明らかになった。
この合併が雲散霧消すると『大宇造船海洋』の財務状況が改善できないことになり、当初からの韓国の目論見が潰れる。
正直 廉価受注にて LNG運搬船市場の独占・寡占の深化・加速をさせたので、自分のまいた種と思わないといけないと思うが、韓国造船業と韓国政府はどう対応するのか見てみたい。
伏流水
問題なのは、この合併が雲散霧消すると『大宇造船海洋』の財務状況が改善できないことです。合併が消えると2兆5,000億ウォンの支援も消える。
そもそもこの合併は経営の傾いた『大宇造船海洋』を政府が支援してきたことに端を発しています。国策銀行『産業銀行』は同社の株式56%を保有し、いわば国有化されたような状態になっていました。
『産業銀行』は、この56%の株式を『現代重工業』の子会社である『韓国朝鮮海洋』に譲渡し、『韓国朝鮮海洋』は自社株を『産業銀行』に渡すという株式の交換を行い、これによって『大宇造船海洋』を売却するという決定をしました。株式交換の結果、『大宇造船海洋』が『現代重工業』のグル-プ内に入ることになります。
さらに、『産業銀行』と『現代重工業』が持ち株会社『韓国造船海洋』を設立し、この下に『現代重工業』が入れることにしました。『現代重工業』『韓国朝鮮海洋』『大宇造船海洋』が『韓国造船海洋』の傘下となり、これでM&Aが出来た経過がありました。『韓国朝鮮海洋』は子会社となる『大宇造船海洋』に「1兆5,000億ウォン」(約1,440億円)を投入。また追加で1兆ウォン(約960億円)を追加投入する計画でした。合計2兆5,000億ウォン(約2,400億円)で傾いた『大宇造船海洋』の財務状況を好転させるつもりだったのです。
ニュース
12日のロイターの報道によると、欧州連合の欧州委員会(EC)は現代重工業による大宇造船海洋の買収に対して企業結合禁止命令を下す見込みだという。ロイターは「(現代重工業と大宇造船海洋が)競争制限に対する懸念を払拭できる是正案を提示するのを拒否し、EUの『拒否権』行使を目前にしている」と報道した。
現代重工業は、締め切り期限である7日になっても、欧州委に是正案を提出しなかった。欧州委の企業結合審査制度は、企業が自ら提出した是正案をもとに運営される。会社が是正案を提示しない場合、当局は一方的に是正措置を課すことはできない。これに対して欧州委は、提出された是正案を検討した後、条件付き承認などを下す形で進めていく。ただし、企業が是正案を出さなかったり、提出した是正案が競争制限性を解消するのには不十分であると判断される場合、EUが禁止命令を下すこともできる。
欧州を含む全世界の主な独占禁止当局は、特にLNG運搬船市場の独占・寡占の深化を懸念してきた。今回の企業結合が行われるとなると、既存の3強体制が2強体制に再編されることになる。この懸念を根本的に解消するためには、株式の売却など構造的な措置が含まれていなければならないが、現代重工業は構造的な措置は選択肢ではないという判断により、是正案を提出しないと伝えられた。
否決する理由は簡単で両社が合併した場合、市場シェアが支配的なものになるからです。例えば、11月にはLNG運搬船のシェアは以下のようになっています。
『現代重工業』の41%と『大宇造船海洋』の19%が合併するという話です。計60%ですので、そのような合併が認められるわけがありません。
「受注ラッシュだ」「ジャックポットだ」と浮かれた話が流れていました。もちろん入札辞退など遠慮するなど協調・善後策を講じなかったこともあります。自業自得という他はなく、否決されると国際的に不許可ですから、合併できなくなります。
なお 現代重工業による大宇造船海洋の買収は、日本・韓国の公正取引委員会でも審査が進行中と記憶しています。これで許可されると思うのは韓国だけと思います。