エンジンの排出ガスの浄化は国際海事機関(IMO)にて策定され、最近の船舶は浄化装置の取り付けなどが行われきた。事始めの時期から設計に噛んでいたので、ただの煤塵(ばいじん)除けだろうと呼べるレベルから始まったのを思い出す。石油関係のプラントでの経験から見れば・・・「海は広いな大きいな」と思っい、排ガス基準の大らかさに感動したものである。
国際的には昨年2020年から やっと脱硫燃料(イオウの少ない燃料)の強化が本格的に始まる。数年前からメタンへの燃料変更、今年になって水素の燃料電池と著しく変わっている。まさにマダラ模様の進化が始まっている。哲学のないアイデア先行の様相で、大変 厳しい時代の到来である。
おじさんはこれが日本の造船産業の凋落の「とどめ」を刺すことになるかも知れないと思っている。仕事を辞めて1年経つので告白するが、仕事などを頂いていた造船会社では厳しいと思った。排ガス規制に対応する状況により多様性を求められ過ぎ、人・物・金を浪費しながら厳しくなると感じた。ご厚意で 造船会社内嘱託として働いたらと提案頂いたが、年寄りがご負担を掛けてはと思い辞退した。
思いは 「フレーフレー ジャパン」である。
国際海事機関(IMO)
国際海事機関(IMO)は、第5回汚染防止・対応小委員会(PPR5)を、平成30年2月5日から9日まで英国ロンドンで開催した。2020年から船舶の燃料油硫黄分濃度規制(SOx規制)が強化されることになった。
石油業界で40歳前まで生きて来たので、今頃か?と言うのが正直な感想である。但し 少し前からアメリカ・ヨーロッパ系が船主として組織を牛耳っていたので、北米&ヨーロッパ近海での排ガス規制はあった。
日本も理事長連続2回目となり、視点を変えて規制エリアを世界に拡大させることになった。日本の国民として嬉しいことであるが、造船業界にとっては船主意向あるいは予定航路別の規制基準対応で、個別に右往左往することになる。他の産業でも起きている「多品種少量生産」と同じで外観はほぼ同じだが、中身が大きく違って来るのである。
ゆっくりとは言え 変化への努力を日本はしていると思う。反面 造船業界は燃料の種類と設備・人員の多面から対応を考えないといけなくなった。更に 造船での日本シェアが落ちたことが影響を及ぼす。
新造船なので予期せぬトラブルが発生すれば、改修・再施工など時間と人を使うことが頻繁に起こると予想できる。韓国も造船での人員不足を露呈しているので、自然 中国の造船会社が人員的にも確保出来るので安心感を海運会社に与え、益々シェアを伸ばしていくと思っている。韓国と日本を比べれば、韓国はロット受注で1隻出来れば次はコピーとなるので日本よりも優位である。
勿論船体構造変更が先行するが、その他 燃料タンクと附属配管そしてエンジンルーム設計の補機増減に伴う修正などであるが・・・日本では人件費が高く人数も限られるのでという事態に陥る。「定型」が作りにくい時代である。
アラビアンライトなどの中東系の石油はイオウが多いものが多い。日本では20年以上前から、灯油・軽油・重油をそのまま使うと 酸化硫黄(SOX)の発生が多くなるため、灯油・軽油は間接脱硫装置、重油は直接脱硫装置を通してイオウ分を除去していた。大気汚染を考え日本では実施されてきたが、諸外国での多数派は非脱硫であった。従って世界各地で給油する船舶は多くの場合、国内の工場と違い排ガスの規制は緩かった。正直極端に言えば 現行スクラバーでも海水で排ガスの酸化イオウを洗い、イオウを含んだ海水を処理排出しながら、排ガスを大気に放出すれば規制値以下となる。空気を汚さず 海を汚す中途半端な状態であり、進化を止めてはいけない分野である。
現在はLNGを燃料にディーゼルエンジンを運転する方式も出てきているが、タンクを収容しやすい自動車専用船、フェリーなどの船種に限られている。従来の燃料としての重油とLNGでは必要な容積が大きく変わり、バルク船などは巨大なLNGタンクを船尾に取付ないといけないと見込まれる。タンカーなどであればタンクの上部にタンクが存在するような形であろうかと思う。
LNGであれば 低イオウなので排ガス付帯設備は大半不要となる。低温LNGタンクはアルミ枕タンクとなり、表面を鏡面に近い加工するので、作ることの出来るメーカーは限られている。国内で経験しているのは三菱・川崎など重工レベルに限られるので、中小造船所は車部品同様 世界から調達しないといけない。 造船も車同様のパーツの世界手配が出来なければコスト競争に負ける。これも溶接技術と技能者の数を確保できる中国の有利さが出て来る。
石油業界での重油の脱硫は超高圧下での水素とイオウの置換なので一定の国以上でなければ維持管理は難しい。おじさんが若い頃にも重質原油から出来る重油がイオウ分が少なかったので、高イオウ重油とブレンドして出荷していた会社もあった。世界的には 燃料供給の問題がどの停泊地で出来るのか?と出て来そうで・・どうなるのやらと思ている。LNGなら低温タンクを持つ燃料補給用小型タンカーが必要となり、将来どうなるのやらと想像している。
なお 酸化窒素(NOx)は 商船船舶は基本的にディーゼルエンジンであるので、車のエンジン同様の対処である。もちろん船舶エンジンは低回転であるので 熱条件はそれなりなので発生量自体から少ない。
現在の低炭素を目指しての急速な変化は 製造コストの上昇により造船会社は、投資の選択と集中がなければ みんなが倒れてしまう危険がある。焼け野原にならないことを祈っている。
二酸化炭素回収
10月 三菱造船、川崎汽船、日本海事協会は、洋上用CO2回収装置の検証プロジェクトで開発したでもプラントにおいて、船舶エンジンからのCO2の回収純度99.9%以上を達成したと発表した。
このプロジェクトは、石炭運搬船などの船舶のエンジンから排出されるCO2の分離回収技術の開発を目指したものであり、陸上プラント用のCO2回収装置を転用し作られた。8月上旬にCO2回収小型デモプラントを搭載後、三菱造船の専門技師が同乗し、プラントの運転、メンテナンス、本船乗組員への機器の操作訓練したとのことである。
以降は実機プラントの開発・搭載であるが、船舶が荷役着桟時 資材と回収品の積み下ろしとなるので何処まで小型化そして作業性向上などの課題がこれからである。