子供の頃 家業がパン屋さんだったので小麦粉の袋はいつも見ていた。日清製粉業務用の粉なので25kg袋にスズメ・金魚・雪などの図柄が描いてあった。父が定期的に粉をブレンドし、箱に入れて保管し使用していた。夕方になると母(今はばあ様)がスズメあるいは金魚の袋から粉を取り出してうどんを打ち「打ち込みうどん」を作っていた。多分スズメ・金魚は中力粉、雪は薄力粉、鳥と言うか鳥もどきの図柄が強力粉だと思う。他にもニワトリなどもあったかなと思い出すが・・・60年近く前のことであるので、記憶が定かではない。

おじさん子供の頃であり、25kg袋はミシンで縫ったように閉じられていたので、この封から縫製糸を取り出し、繋いでタコ糸にしていた。その為 正月直前が来ると子供の頃の凧あげを思い出す。結び目だらけのタコ糸 この辺りを思い出しても、それなりに貧乏だった事が判る。

中学校になる前後で、父が脳梗塞にも似た健康状態となり、体力的にも無理と言う事でパン屋を廃業し、不動産屋に転業した。その後は業務用袋などを見るのは 知り合いのうどん屋さんのみとなった。

基本的には小麦粉はタンパク質の割合で3種類に分けられ、ブレンドなどされながら使われる。別の言い方で言えば グルテンの量や性質により分けられる。ケーキ・パンなどの生地の弾力やコシを作る網目状の物質であり、この量の違いによって生地の硬さや食感が異なる。例えばケーキなどは如何にグルテンの結合を防ぐかであり、うどんはコシを作る為 如何にグルテンの網目結合をさせるかなど 料理により異なる。

今回は 順序からは近代製粉技術について書く予定であったが、近日エネルギー関係に疲れたので、子供の頃からの思い出の様に書くことにした。

薄力粉

薄力粉は、グルテンの含有量が7%前後と比較的少なめである。「軟質小麦」から作られ、グルテンが少ないので粘りができにくく、水分を加えてこねるとふんわりとした生地になる。粒子が細かく、ダマになりやすいので、良くふるうことで生地に混ざりやすくなります。

中力粉

中力粉はグルテンの含有量が9%前後で、「中間質小麦」と「軟質小麦」から作られます。水分を加えてこねると、ふんわりとした食感だけでなく、適度な弾力とコシが生まれる。主にうどんなどの麺類に使われることから、おじさんが子供の頃は「うどん粉」という名前で通じていました。

強力粉

強力粉はグルテンの含有量が12%前後と最も多い。「硬質小麦」が原料。粘りや弾力性に優れ、こねるほどに生地の伸びが良くなり、もちもちとした食感に仕上がります。粒子は3種のなかで一番粗く、手で握るとサラサラとした感触です。

ブレンド

父が定期的にブレンドしているのを 横でよく見ていた。多分自分が納得したパンを作りたかったのが原因であると今なら分かる。振いと量がそれなりに必要なので一般の方にはお勧めできない。

閑話休題

おじさん子供の頃から門前の小僧よろしく おしゃまにやっていた。その結果・・・奥さんが初めてクリスマスケーキ作りを自宅で焼いた時、膨らまないのを見ておじさんが焼いてみせた。そして父がそれを見て「しっとり感が足らないのでサラダオイル添加が良い」「砂糖を増やして1日置いては」などと話してしまい、父が元職人と分かり奥さんは困っていた。またこのことで ケーキスポンジが焼けないのは 家族では ばあ様と奥さんのみと明らかになった。

奥さん 負けず嫌いと見えて それ以降良く焼くこと・・・まあ人間 回数である。

ケーキスポンジなど焼くと性格に依るのだが、キッチリ混合しようとしてグルテンの粘りを出して失敗することが多い。振って粉を投入し、多少ダマが残っても さっくり大きく混ぜることである。

なお おじさん ケーキスポンジ作りは高校時代の友人の菓子屋で、クリスマス直前に手伝い覚えた。昨年まで友人の兄が継いで商売をしていたが、跡継ぎもいないようで 昨年店舗を閉めた。その後 近所の産直市に行ったところ、同じ店名のタグが付いたお菓子パックがあった。しぶとく商売は続けておられるらしい。

おじさん職人の子供として育ち 両親が共働きだったので、饅頭屋に行っては金を払って自分の食べる饅頭を作り、ボーロ屋に行っては横でおじさんと話しながら・・・相手もおじさん家(ち)の家業が分かっていて、おまけにおじさんが「やりたがり」なのが分かったのか、色々やらせてもらった。テレビなんかで 餡ベラ(あんべら:餡子をすくうへら)を使い饅頭の皮を被せていく職人技を見るが、それを小学校3年生の頃 手取り足取り教えてもらった。もちろん材料費として作った饅頭は買わされた。家にも餡ベラは アンパン・クリームパンなどで日常使うもので、寄ってたかって教えてもらったのは職人修行と同じである。

結局はおじさん パン屋にならず・・・燃料屋でサラリーマンして、不動産屋と設計屋を自営・・・65歳にて隠居している。これも考えて見れば面白い。流れ 流れて 流れるままに人生を過ごしている。そして今 ガソリンスタンドでアルバイトである。

誰もが その場その場で一生懸命やってれば、人生は何とかなると考えておいた方が良い。豊かとまではいかないが、それなりに暮らしていけるようである・・・とおじさん思っている。