ガソリンの大半は税金である。出荷時の単価に輸送費他保管料など加わるが、約半分は揮発油税と消費税が乗っかり販売価格が決まる。価格の決定は元売り系と地域のディーラーなどの価格決定力が小売りSSに及ぶ。昔はライトナフサなどが化学工業の盛んな区域では流れていたので怪しいガソリン、あるいはA重油の着色用重質留分(アスファルトのようなもの)を除いて灯油他でセタン価を適当に調整して軽油として販売する脱法業者・ヤクザなどがいた。
おじさんは石油業界では 営業・販売関係はたずさわった経験はないが、製造とエンジニアリング部門を歩いて中途退職した。だが同期のメンバーなどと社外での懇親などがあり、かつ関連資料は読むことが出来たので大まかに知っているだけである。
都会ならいざ知らず 田舎では生活の足である車へのガソリン重課税は悪法過ぎる。この税制のためガソリン価格は硬直的に上がる。政治が解決する事柄と時期であると思う。
ガソリン価格
多くのセルフガソリンスタンドの経営は(販売価格―40円)=仕入れ価格程度であれば、会社経費・社員・アルバイトの人件費を賄えると言われていた。規模はガソリン・軽油合わせて5KL/日程度が目安となる。おじさんの頃とはタンク・POSなどの設備償却負担が増えているので40円がもう少し増えるかも知れない。
従ってガソリンスタンドで値段が160円なら、ガソリンスタンドにはタンクローリー運送費込みで約120円で大体卸されていると想定が出来る。現在ガソリン価格が上がっている地域は配送などでの末端である理由でもある。同時に安価な玉(ぎょく)の取り合いが激しくなる状況では、安価なものは地方に回らない。
ここに揮発油税などの悪法が絡んでくる。財務省はメーカーその他から 税に消費税を掛けて取っているとの批判を受けて、震災復興を盾に抗弁していたが言い訳に過ぎない。2重に課税していることは事実である。
ガソリンなどの揮発油は メーカーから出荷される際に揮発油税及び地方揮発油税の特例税率(53.8 円/ℓ)が課税される。従て原価の半分以上は税金と言う事になる。なお原油にも石油税が通関時掛かる。従って簡略的に課税額を55円とした。
税金、運送費そしてガソリンスタンドの営業経費を除いた実質的なガソリンの値段はリッター当たり50円にもならない。
120円(販売原価)―16円(消費税)―55円(揮発油税他)=49円(メーカー価格)
もっと言えば おじさんが製油所で働いていた頃とリッター当たりの値段は変らない。
原油の価格変動が著しくても、ガソリン原価に及ぼす影響は 10円までとお分かりいただけると思う。これは税を乗せてむしり取っている構造に近く、消費量が減らない限り 国の税収は変らないとも言える。
値下げ要因
主たる価格の構成が税金であり、一時的に震災復興のために重課税しているのが現状である。原油が上がったとはいえ価格構成の大部分が税金であるので、原油の値上がりが価格に及ぼす影響は少ない。生活必需品として食料品などは消費税は減税されている。田舎で暮らせば車は必需品であり、ガソリンもしかりである。
2010年に当時の民主党政権は“ガソリン価格が3カ月続いた場合、現在課税されている揮発油税と地方揮発油税の特別税率分25.1円を徴収しない”といういわゆるトリガー条項が租税特別措置法に盛り込んだ。しかし 翌2011年に発生した東日本大震災の復興予算が必要だということで このトリガー条項は適用が停止になり、現在に至る。
賃金が上がらない
おじさんこのようなガソリン価格の構造を見ていると、原価と販売価格の差額を国が税収し、国並びに地方公共団体が使っていることに気付く。日本国民が個別に豊かになるのではなく補助事業・福祉その他で使って、国民には還元している構造である。
従って原油価格が上がれば それに合わせて ガソリンの価格も上がるような比例的価格システムであることが必要であると思う。そうでなければ世界経済で作られる市場価格に合わせ、個人個別の賃金が上がることもない。
ガソリン価格を見れば 税金もこのレベルまでとなれば、正常な比例的価格システムとならない見本が日本の税制である。市場価格に合わせて変動することが無く、硬直化している。取りやすい所から取って来た結果と思う。
おじさんが大人になる直前 急激に賃金が上がり、おじさんが働き出した頃 税金を確保する改正が相次いだ。現在 賃金が上がらず、企業内留保は増える一方である。おじさんのサラリーマン時代のことを考えるとよく似ている。
税制のシステムが古くなり、硬直化してきたと思える。ソロソロ税制を見直す時期ではと思う。