最近プロペラのない円筒形の風力発電と脚光を浴びているようだが、高効率を期待するのは最初から無理とお伝えしたい。この現象極端に言えば 野球での投手のボールの変化をもたらす力であり、風速がそれなりにある地域でないと使い物にならないと思われる。投手のボールの速度は150km/Hなので秒速42m/秒となる。これだと気象では暴風・強風と呼ばれる速度領域である。風力により回転が大きく左右され、性能を発揮するのは難しいと思っている。

流体力学ではこの現象をマグナス(ドイツ人研究者なのでマグヌスでも同じ)効果というが、砲弾における現象研究から生まれた。

この方式 南米パタゴニアなど年中強風が吹き渡る環境にしか適さないと思っている。日本の気象では難しい。

ローター船

帆船による省エネルギーを考えた案で、円筒をモーターで回転させて船の推進力を得る船が試作されたことがある。ローター船というが結構歴史が古い。

ローター船(ローターせん、英: rotor ship、独: Rotorschiff)とは、風力とマグナス効果を利用することにより、小さな動力で航行できる船である。ドイツの航空技術者アントン・フレットナーが1924年に発明した。

ローター船は、垂直に立てられた円筒(ローター)を船上に備えている。例えば図のように左舷から風を受けている状態で、ローターを動力によって回転(上から見て時計回り)させると、マグヌス効果によってローターに風と鉛直の向き(前向き)の力が働き、船は前進する。フレットナーによるローター船の第一号はブッカウ号(Buckau)で、これは元来帆船だったものを改造して作られた。総トン数は496トン。直径約4メートル・高さ約17メートルのローターを二本備えていた。ローターを回すための動力は電気モーターで、発電は45馬力のディーゼルエンジンで為された。ロータは毎分200回転し、5ノットの速度を記録した。1925年に処女航海に成功、1926年には大西洋横断に成功した。

維持費の問題からその後しばらくローター船は見捨てられていたが、1980年代以降、1983年にアルシオーヌ(Alcyone)、カリプソII(Calypso II)、2006年にUni-Kat Flensburg(ドイツ語版)、2008年にE-Ship 1(英語版)など、再び数隻が建造されている。 これらの船にはローターの発展形として、断面から気流を吸い込み揚力を発生させるターボセイルと呼ばれる技術が使われた。流体力学を学んだことのある方は 境界層コントロールしただけとお判りいただけるかと思う。従って効率が劇的に上がることはない。

環境問題対策として、ローター船は効率がよいという観点から日本の海洋大学でも研究が進められた。

なお 少し話を変えるが おじさんの知る限り 日本国内の内航貨物船の実績では、昭和55年(1980)に竣工した世界初の省エネ帆装商船 新愛徳丸(開閉式硬質セイルを付けたもの)に省エネルギー性は及ばなかったと記憶している。やはりセイルがマシだったという話である。

総括すれば 今回の円柱風力発電の方式(原理)がローター船の逆構想のため、それなりと考えている。

流体中の円柱

流体中の円柱の話を書いたので ついでと言っては何だが、円柱の振動について書いておきたい。カルマン渦による円筒などの振動である。流れのなかに障害物を置いたとき、または流体中で固体を動かしたときにその後方に交互にできる渦の列のことをいう。 渦は励振力をもつので、流れ場のなかにおいた物体は振動する。電線がびゅうびゅうと音を立てる現象や、一定速度で走行する自動車のアンテナが振動する現象などの原因となっている。

円柱後部の流れ

低乱流の中で、断面が均一な形状の背の高い構造物には、カルマン渦列ができてしまう。 渦が物体の側面に沿って発生する周期的な横風の力は、工学上望ましくない。 エンジニアにとっては、潜水艦の潜望鏡から工業用煙突や超高層ビルまで、さまざまな構造物を設計する際に、渦の影響を考慮することが重要である。

現在では電線を制震させるなど カルマン渦の影響を減衰方向とする研究がされている。力とすれば流体の速度が低速域からも利用出来そうなので、おじさんは優秀な方のアイデアを待ちたいと思っている。

投稿者

おじさん

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