世界の製造品のおよそ9割を輸送するコンテナ船が、中国と貿易戦争を繰り広げるトランプ米大統領の標的になったようである。ブルームバーグによれば 中国で建造された船舶、あるいは中国の海運会社が運航する船舶が米国の港湾に入港するたびに、少なくとも100万ドル(約1億4300万円)の入港料金を課すことを検討している。実際に導入されれば、中国以外への国への造船発注 そして海運大手のコストが増えるのはほぼ確実である。
運航中および建造中の船舶は中国製が多く、主要海運会社はいずれも高額な港湾使用料の対象となる可能性がある。そんな政策が出てくれば 中国のみならず世界の海運会社・船主は戦々恐々の状態になる。にんまりするのは受注出来ると韓国・日本など他国の造船会社となるのであろうが・・そうは問屋が卸さないと言うのが実情である。三井・川崎は中国での造船に舵を切った状態である。韓国・日本(今治造船)などでも ブロックを中国で生産して、最終組み立てを自国内で行っている。そして韓国・日本共に 熟練労働者に中国などからの研修生(先日は今治造船でトラブル発生)・工員などを使っている。自国内労働者を集めるのがコストアップと人的資源でも無理になっている。
船舶のドア・ハッチ・ベントなど規格品である船舶部品はとうの昔に中国製品化されている。正直部品レベルもそうなら、コンテナ・LNGなどの上甲板以外の鋼材は介在不純物であるラミネーションなどの問題がなければ・・ほとんどの部分に使用されている。そして中国でブロック生産となり多くの部品も仮付け状態で日本に運ばれている。
こんな状況でアメリカの造船を復活させようとするのだから・・口があんぐり開いて・・いう言葉も見当たらない。現在は多くないと思われる溶接職人・ぎょう鉄職人など 鉄を曲げ・組み合わせる職人をどうするのか?復活させようとすれば何年もの時間が掛かる。外国から企業を誘致しても 職人の育成などが出来て、次世代へ技術の伝承がなければ砂上の楼閣と同じである。
世界有数の海運会社MSCとAPモラー・マースクも課題に直面している。両社が保有する船隊うち、中国で建造された船舶は約4分の1を占める。そして 新造船の発注先は大きく中国に偏っており、MSCの発注リストの90%以上、マースクでも70%以上が中国で建造予定である。入港料導入のリスクにもかかわらず、両者そして他社の多くが中国への発注を継続している。これについては 船主が発注して・・海運会社が受託して用船するだけなので、海運会社が 新しい船を持つ船主に切り替えれば良いだけである。そうなれば ギリシャなどの金持ちなどが泣くのでは?と思っている。
入港料導入で中国を痛めつけようとするトランプにしたら、知ったことじゃないだろうが・・・多くの船舶が高額な港湾使用料の対象となる可能性が大きく、近い将来にはアメリカの輸出入物資の受払につまづく可能性もある。日本で言われる物流でのトラック台数・運転者が少ないのと同様である。
人を呪わば 穴二つ