現在造船業は低迷している。IMO(国際海事機関)の船舶の排ガス規制強化に伴い、世界の船舶更新が増え 需要は拡大する予定である。そんな中で日本は置いていかれたような状況である。中韓は政府の補助もあり、雇用を維持するため 安価な受注をしてシェアを取った状況である。

クラークソン・リサーチによれば 3月の世界の発注量は前月比76%、前年同月比320%、それぞれ増加し、単月ベースで2015年6月以来の高水準となった。1~3月の累計発注量は1024万CGT。このうち韓国が532万CGTを受注しシェアは52%だった。中国が426万CGT(シェア42%)、日本が35万CGT(4%)と続いた。

3月末時点で世界全体の手持ち工事量は7429万CGTで、前月末に比べ329万CGT増加した。中国の手持ち工事量が2717万CGT、韓国が2438万CGT、日本が777万CGTとなっている。

排ガスの浄化の為 これから船舶は燃料をプロパン以下の炭化水素とすることが必要となっている状況である。正直日本はこの辺りから技術的に弱い。エンジンなどは問題なく対応できるが、燃料タンクと燃料配管系統は経験不足を否めない。言い換えれば低温タンクと低温燃料配管への経験が不足していると考えている。

コストで中国に負け 技術力とコストで韓国に負けるワンサイドゲームが始まっている。

低温設備

ガスを圧縮して貯蔵する場合と低温で貯蔵する場合、低温であればより多くのガスを貯蔵できる。また低温の場合が低圧と出来る為 タンクの材料を削減でき防熱などを含めても安価・軽量に貯蔵できる。したがってこれからの船舶は低温タンクを備える形が一般的になると見込める。

タンクの多くは上甲板に置かれるので船舶の復元力から言えば良くない。また造船会社で低温タンクを作ったことのある会社は旧大手と言われた三菱、川崎あたりになる。今治などもメンブレムLNG船は作ったが確かタンクは別だったと記憶している。中小造船所ではほとんどないと思う。

低温タンクなど低温流体を扱う設備は難しい。温度範囲は LNGでー162℃ プロパンでー42℃であるので、製作に伴う溶接などの管理が難しい。それなりの熟練工を集めなければいけない。

配管は空になれば40℃近くに上昇 液が入れば―162℃など200℃の温度差で伸縮する。配管は下手に固定できない上に 船体も温度と波で変形するので設計が難しい。最近は応力解析ソフトなどがあるので利用すればそれなりに検討することが出来る。実を言うとこのソフト最新バージョンは一台で年間レンタル保守料で300万円程する。このソフトの旧英語バージョンをおじさんの会社も持っている。現役の頃は配管の応力解析などを行っていた。

配管の固定方法などの考え方は船体変形・振動に対する知識がないと難しい。船体変形に対するシュミレーションと現物検証確認などは費用と人員が掛かる。バルク船など適当に稼げる一般的な船ばかりを大半の造船所は作って来たので、低温タンクと低温配管対応はむずかしいと考えている。

しかしながら タンクを後部上甲板もしくは船尾に置くレイアウトでは 低温配管のレイアウトおよびタンク付属配管も多くはない。多少失敗してもやり直し易いと思う。タンクは別購入として、中小でもチャレンジできる要素は十分と思う。

冒険・勇気?

船舶の設計・建造において失敗した場合、多くの追加費用を投入して改修して船主に引き渡さないといけない。したがって失敗しないために 設計・製作などを経験した技術者を雇わざるを得ない。そうでなければ人を育てるため、コストを掛けても良いと冒険する勇気があるかが日本の経営者に問われる。チャレンジしなければ生き残るのは難しい。

韓国が伸びたの原因は経営者の支配力と考え方にあると思う。サラリーマン社長で長期視点の比重が小さく、代表期間を大過なく過ごせばよい日本と財閥構造で長期にわたり支配できる韓国では考えかたが大きく異なる。多少の赤字も恐れず、株主を恐れず、経営出来るメリットは大きい。

韓国は過去の技術的投資を回収している段階と思う。安価な受注であるが政府補助金を得て、トータルはプラスと思う。なお韓国は多額な特許料をフランス GTT 社に支払っている。基本特許を持たないので多少の負担はしかたないと考えているのだろうと思う。

今 日本が出来ることは LNG船建造において通産省が主導してモス型を建造したようなノウハウと技術力を底上げするような開発費用の補助が必要と思う。LNG船のメインとなっているメンブレン型の新しい形の開発であれば良いかと思う。なお韓国では公社により新方式が案出・発注製作したが、船体外に着氷して失敗した。

最後にアイキャチに設定した船は タンクと配管を川崎、船体は来島と記憶している。現在 国内に少数存在する沿岸型低温LNG船である。中小と大手が手を繋いで 再度の飛躍をされんことを願って選んだ。

投稿者

おじさん

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