銃身の作り方にはライフルを切るライフルマシンがある。例えば古い銃器メーカーであるミロク製作所はブローチングという方法でライフルを刻んでいた。64式小銃はロータリー・フォージングという冷間鍛造にて製作していた。どちらが良いとおじさんが問われたら、残留応力と加工硬化で強度はロータリー・フォージング(回転式冷間鍛造機)が良いと思う。
いずれも先にガンドリルにて下穴を明けておく。ブローチングについては 全てのライフルを一気に引っかいて作成する。軍用銃身・リボルバーに多用される。WWⅡ時に完成したが、詳細は64式小銃から外れるので詳細は割愛させて頂く。
ロータリー・フォージング
基本的には冷間鍛造である。1930年代ドイツで開発。タングステンカーバイトの銃身の型(マンドレル)を太いパイプに入れ、回しながら周りを叩いて細くする。端のほうから叩いてゆくとマンドレルはライフルを形作りながら前進して最後に抜き出てくる。「仕上げ」はほとんど不要だが銃口内のサイズぶれが出やすい。短時間で銃身が完成し効率が良い。64式小銃の銃身はロータリー・フォージング(回転式冷間鍛造機)で作られていた。
加工後の点検
冷間鍛造であるので銃身材料に割れが発生する場合がある。検査には磁粉探傷という方法で割れがないことを確認する。磁粉探傷などは非破壊検査などでも有名な方法であるのでお調べ頂ければすぐ出て来る。また曲がるなどしていないか確認する。この曲がりの確認と修正が興味深かった。緑のライトに熟練工が銃口の一端向け 反対から覗いて曲がり部分にハンドル操作で押し付けるようなジグで修正していた。釣り竿の竹の曲げ直し(火入れタメ木)のようで興味深かった。修正されたものを検査したが、熟練工の方の能力に感心した思い出がある。
この後 切削・熱処理・メッキ・防錆・表面処理・検査などの行程を経て銃身が作られていく。
銃身内クロムメッキ
銃身内部を清掃などで擦るなどすれば銃身内が摩耗する。また銃弾が2万発以上通過したりすれば摩耗が著しくなる。そうなれば発射された銃弾に「横弾」という現象が起きるようになる。ライフルによる弾丸の回転が不足し、弾が横倒しになるような状態である。直進方向の鉛直向きの回転ではなく 斜めに適当に回転し出す。こうなれば正確に照準出来なくなる。
横弾現象は 銃をベストに保とうとして行う手入れが、性能劣化を生じさせる場合が多い。過ぎたるは・・・という話はどこにでもある。
前の記事でも書いたが 機関銃レベルを初期から求められたため、64式小銃は銃身内をクロームメッキにて耐摩耗性を確保して「横弾」対策をしたプチ贅沢仕様であった。
最新の制式である20式小銃が銃身が短くなりながら、有効射程距離が変わらない原因は 銃身内部の表面加工が影響しているとおじさんは考えている。有効射程が変わらないことは 砲外弾道学で考えれば弾丸の持つ運動エネルギーが有効射程では同じとなる。従って89式小銃と同等の撃ち出し速度と考えられる。「横弾」を防ぐ回転力を与えながら、短くなった銃身からの弾の射出速度を上げる。20式小銃はどんな物質で表面処理しているか、早く知りたいものである。
相反するものを高いレベルで調和させていることを感じ、開発者冥利に尽きることだったろうと推察している。